創作サイト【文燈】の雑記、一次、二次創作書き散らし用ブログ。
休止解除しました。創作関連はサイトでの更新に戻るので今後は雑記、返信等が中心となるでしょう。更新が鈍い場合はツイッター(http://twitter.jp/gohto_furi)に潜伏している可能性が、大。
ブログ記事なのに臆面もなくリツイート。(われは天下の回し者)
しかしてその実体はと言えば、単に琴線にお触りした書籍の一部分をごそっと引用させて頂いているだけの代物ですが。リツイートって日本語的表現で超訳したらどんなものになるのでしょう。…………忍法つぶやき返し……?(そして返り討ち)
で、現在読解進行中の【ノンセンソロギカ】(柳瀬尚紀)より、とある一部分を。
<RETWEET>
【幻獣辞典の余白を 現代詩手帖のページで】
ウ
ウは、鵜飼の鵜にそっくりであることからこの名がある。
ウには、愛すべきウと侮蔑すべきウがいる。愛すべきウは自己のウたることを承知のうえで適当に、もしくは適度にウに甘んじているだけなので、もはやウとして失格である。侮蔑すべきウは自己のウたることを知ってか知らずか、ともかく猛烈に、かつ過度にウに徹しきってしまうので、これが本物のウである。以下は、その本物のウ、なかでもエリートのウと、エリートのウを志向するウに関するおよその輪郭である。
ウは早起きである。しかし早朝の畑や海へ出かけるのではなく、きちんとユニホームを着て箱型の運搬車に乗る。箱のなかは乱闘寸前の混雑だが、ウは耐える。一流大学を一流の成績で出ているので耐える能力も超一流だ。この日課をツーキンといってアングロサクソン語では commute すなわち「取替える」「交換する」「金で代償する」の意味である。ウは交換可能のずば抜けた完成品である。その意味では、ウは紙幣にも似ている。事実、ウは豊かだし、平べったい。ウの出かける先は、社会の二文字をさかさまにした巨大な組織である。むろんその組織は一流で、ウはそれ以外の組織を認めない。それどころか、ウにとって、自分の属する社会の二文字をさかさまにした組織以外に社会はない。そこの規律の外に何かが存在しうるなど理解しがたいのだ。
そこの組織にウは服従しているのだろうか。そうではない。ウはそこの掟をみずからが支えていると信じはじめ、そのことを誇りとするにいたる。ついにウは、自分がニホンケイザイを支えていることに気づくのだ。かくてウは一人前となる。ウの凛々しい姿をつぎの絵に見るがよい。(絵は略)
ウは、何よりもまず、面白みのない怪物だ。滑稽という人生の潤滑油を受けつけないのだ。もともと滑稽な要素の大きい性の営みを、ウがどんなふうに果たすのか、想像するのは至難である。たぶん包皮にカイシャ名を刺青しているのかもしれない。ウが酒を飲むときも、やはり面白みはない。そもそも、ウのしゃべることが面白くないのだ。では、ウは道化になれないかというと、ここでもウは一級である。一昔前、コッケイという国立芝居小屋に特別出演を要請され、その一言一句、一挙一動がテレビ中継されたとき、二人だったか三人だったかのウは、いかなる道化役者もかなわない道化ぶりをやってのけて、ウたる怪物の面目を発揮した。
妙なことに、人間の親たちはわが息子を本物のウに仕立てあげようと躍起になる。
筆者は、しょうがなくてウという怪物をやっている失格のウが好きである。
</RETWEET>
このウは、単純に【サラリーマン/OL】と変換するだけでなく【ウ=U=YOU=あなた】との意味を増量するとより骨身と血肉に染み渡るように思えます。commute の意味があまりにも真理を抉りすぎていて、笑うに笑えない。
そして柳瀬さんの本業が【英文学者】である事が時々どころか終日信じられなくなる。
――いや、“だからこそ”、日本語の設計図を日本文学者以上に把握しているのかもしれない、か。
しかしてその実体はと言えば、単に琴線にお触りした書籍の一部分をごそっと引用させて頂いているだけの代物ですが。リツイートって日本語的表現で超訳したらどんなものになるのでしょう。…………忍法つぶやき返し……?(そして返り討ち)
で、現在読解進行中の【ノンセンソロギカ】(柳瀬尚紀)より、とある一部分を。
<RETWEET>
【幻獣辞典の余白を 現代詩手帖のページで】
ウ
ウは、鵜飼の鵜にそっくりであることからこの名がある。
ウには、愛すべきウと侮蔑すべきウがいる。愛すべきウは自己のウたることを承知のうえで適当に、もしくは適度にウに甘んじているだけなので、もはやウとして失格である。侮蔑すべきウは自己のウたることを知ってか知らずか、ともかく猛烈に、かつ過度にウに徹しきってしまうので、これが本物のウである。以下は、その本物のウ、なかでもエリートのウと、エリートのウを志向するウに関するおよその輪郭である。
ウは早起きである。しかし早朝の畑や海へ出かけるのではなく、きちんとユニホームを着て箱型の運搬車に乗る。箱のなかは乱闘寸前の混雑だが、ウは耐える。一流大学を一流の成績で出ているので耐える能力も超一流だ。この日課をツーキンといってアングロサクソン語では commute すなわち「取替える」「交換する」「金で代償する」の意味である。ウは交換可能のずば抜けた完成品である。その意味では、ウは紙幣にも似ている。事実、ウは豊かだし、平べったい。ウの出かける先は、社会の二文字をさかさまにした巨大な組織である。むろんその組織は一流で、ウはそれ以外の組織を認めない。それどころか、ウにとって、自分の属する社会の二文字をさかさまにした組織以外に社会はない。そこの規律の外に何かが存在しうるなど理解しがたいのだ。
そこの組織にウは服従しているのだろうか。そうではない。ウはそこの掟をみずからが支えていると信じはじめ、そのことを誇りとするにいたる。ついにウは、自分がニホンケイザイを支えていることに気づくのだ。かくてウは一人前となる。ウの凛々しい姿をつぎの絵に見るがよい。(絵は略)
ウは、何よりもまず、面白みのない怪物だ。滑稽という人生の潤滑油を受けつけないのだ。もともと滑稽な要素の大きい性の営みを、ウがどんなふうに果たすのか、想像するのは至難である。たぶん包皮にカイシャ名を刺青しているのかもしれない。ウが酒を飲むときも、やはり面白みはない。そもそも、ウのしゃべることが面白くないのだ。では、ウは道化になれないかというと、ここでもウは一級である。一昔前、コッケイという国立芝居小屋に特別出演を要請され、その一言一句、一挙一動がテレビ中継されたとき、二人だったか三人だったかのウは、いかなる道化役者もかなわない道化ぶりをやってのけて、ウたる怪物の面目を発揮した。
妙なことに、人間の親たちはわが息子を本物のウに仕立てあげようと躍起になる。
筆者は、しょうがなくてウという怪物をやっている失格のウが好きである。
</RETWEET>
このウは、単純に【サラリーマン/OL】と変換するだけでなく【ウ=U=YOU=あなた】との意味を増量するとより骨身と血肉に染み渡るように思えます。commute の意味があまりにも真理を抉りすぎていて、笑うに笑えない。
そして柳瀬さんの本業が【英文学者】である事が時々どころか終日信じられなくなる。
――いや、“だからこそ”、日本語の設計図を日本文学者以上に把握しているのかもしれない、か。
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