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書評本文は、【つづきはこちら】よりどうぞ。
【 Self-Reference ENGINE 】
( SF / 円城 塔 / ハヤカワ文庫JA )
読後感をこれほどまでに“感じにくい”物語――小説?――物語――物語?――に、幸いと言うか不幸と言うか、これまでに巡り合った記憶はない。一言で表すなら【空集合】とタイピングするのが最適解だとは思うのだけれど、空と言うよりは……喰う、の方がより中身に適応している。人を喰った話。けれど馬鹿にしている訳ではなく、ただ、読者の予想とか推測とかの射程距離から遥か離れ“ていない”視界の死角をちょこまかと動き回りながら、話を転がしていったように感じられた。
時間が時間自身を落っことして粉々にしてしまった=【イベント】をXY軸の零とすれば、この物語はそのグラフ上にてんでバラバラに描き込まれた断線と断片だらけの落書きのようなものと言えるかもしれませんね。そんな場合、得てして最終的には――遥か遠くから眺めてみれば落書きにしか見えなかったそれが一つの絵画に見える、そんな模範的な結末が用意されているのだろうけれど、この物語の場合は落書きは何処まで行っても何処から見ても全く同じ形状から型崩れしない。ある意味それは、“変化しながら現状維持し続けている”という不可思議な矛盾でもあるのですが。
>床下から大量のフロイト
なぜフロイトでなければならないんですか? ユングでは駄目だったんですか?
>悪の電子頭脳
人の踵は意外とタフネス。小学一年生ですら画鋲程度じゃそんなには動じない。(経験者より)
>監察官ボビー
貴方の所為でもうこれまでと同じ感覚で“同族”を履けなくなりそうですどうしてくれる!(笑)
この作者だから書けた物語、と言えるのかどうかは分からない。多分、そうとは言えない。
誰にでも書けるけれど、“お話を書こう”という動機や意識を根こそぎ捨て去らないと辿り着けない場所にこの物語は存在している。確かに何かを書いているんだけれど何を書いているかを自分で意識してしまった瞬間、この話のような世界に到達する為の道は途切れてしまうでしょう。
少なくともこの作品に関しては、作品世界そのものではなく、それを描き切るまでの作者の執筆過程そのものがサイエンス・フィクションのように思えた。今自分の目の前に見えている文庫も文章も、もしかするともしかしなくても、その作品“によって創り出された”作家・円城塔という名の一大サイエンス・フィクションを読み解く為のツールに過ぎないのかも。
有り得ないとは思うけれど、
もしこの作品を漫画化するなら――是非とも、うすた先生(マサルさん、ジャガー)に手掛けて貰いたいと考えていたりします。リタとジェイムス、そしてトメさんのスタッフロール辺りを絵として描写するなら、円城氏と同じくらい(そして全然違う)フィクションの泥沼に浸かっているこの人しかいない。大真面目に、そう思う。確信している。 …笑 (笑うな)
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