【 チーム・バチスタの栄光(上・下) 】
( 文庫・小説 / 海堂尊 / 宝島社文庫 )
噂には常々聞いていたけれど噂以上の存在にならないまま(【図書館戦争】と同様にハードカバーの金銭的な壁)、映画化、文庫化の話を聞いてそこで漸く興味を持って文庫版を買ってみました。
そして久々の後悔。
ハードカバーだろうが学術書扱いだろうが初遭遇した時点で買っておくべきだった、と、読み終えてから思いましたよ。単なる医療小説の域を鼻歌交じりに飛び越えた【メディカル・エンターテインメント】は、こちらの想像を軽く三枚以上は上回る神業の逸品。これ本当に”おいしゃさま”が書いたの、とページをめくる度に疑ってしまう会話文、地の文の中に散りばめられた冴え冴えとした言葉。田口医師の内心での言動はもう【され竜】のガユスを彷彿とさせますね。しかもガユス以上に愚痴成分の割合が多くて色々な意味で涙を誘います。この人は貧乏くじを引く為だけにこの世に産み落とされたのではないかなと思わずにはいられない。
で、もう一人の主役、【ロジカル・モンスター】白鳥は――それこそ戯言遣いとサシで対談討論させても捻じ伏せてしまうのではないかと思えるロジカリストですね。「これはモンスターですか?」「いいえ、これはデーモンもしくはサタンです」(例文)と頭の中に英語の教科書じみた文章が。”これ”の時点で人間扱いしていませんが、多分人間扱いしなくても罰は全く当たらないと思いました。(棒読み)
ゴンタ君(誰)独り勝ち、と思った人はきっと正解。
ゴンタ君とマコリンを敵に回したらゲームオーバーだと感じた人は、即合格。
やっぱり田口医師は貧乏くじの星の下に生まれた御仁だと思いました。まる。
映画は現時点(08/5月)では観ていません。まあ、興行的には仕方のない措置なのでしょうが、田口役が女性(竹内結子)になっていたのはちょっと残念。個人的なイメージでは田口医師には白鳥役の阿部寛こそが一番相応しいと感じていたので、尚更です。と言うか白鳥はぽっちゃり体型だからこその白鳥であって、阿部寛では小説版でのあの独特の生理的嫌悪感が出し切れないと思ってしまうのですけどねー。この辺りの齟齬は、自分でちゃんと映画版を観てみない事には解決されないでしょう。だからその内に観ます。(観ろよ)
>【ナイチンゲールの沈黙】
>【ジェネラル・ルージュの凱旋】
田口・白鳥シリーズの続刊二冊も読み終えました。両方ともお薦めです。シリーズ丸ごとお薦め。